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株式会社サトー化成
(岐阜県海津市)

佐藤さん、横山さん 株式会社サトー化成は1987年(昭和62年)に有限会社として設立。2024年(令和6年)に関連会社と合併し、株式会社に統合。娯楽機械の付属品の製造および卸業などを行っている。
従業員数は33名(2025年7月現在)。
今回は、会長の佐藤正一さん、取締役の横山有紀さんからお話を伺った。
経営者が率先して、産業カウンセラー資格を取得したり、産保センターの研修を受講したりするなど、メンタルヘルスの知識やスキルを身につけ実践しており、健康経営の積極的な取組みにつながっている。
最初に、健康経営に取り組んだきっかけと、健康経営やメンタルヘルス対策の様々な取組みについてお話を伺った。
“大切な従業員の健康を守りたい”という経営者の強い思いから健康経営に取り組み始めました 「私(佐藤さん)は、若い頃は健康に自信があったのですが、60歳を過ぎた頃から徐々に健康診断で指摘を受けるようになり、年齢を重ねるとともに健康の大切さを感じるようになりました。そうした自身の体験から、“大切な従業員の健康を守りたい”と強く思うようになり、健康経営に取り組みはじめました。当社は愛知県と岐阜県の2拠点体制ですが、どちらの拠点も従業員の平均年齢が50代になってきていますので、より一層従業員の健康面に気を付けていきたいと考えています。」
バーチャルウォーキング “バーチャルウォーキング”を通じて、従業員に歩行習慣が自然と身につき、互いに話す機会も増えました 「健康経営の取組みとして、まずは、従業員皆で歩くことから始めました。はじめたきっかけは、協会けんぽの保健師さんの紹介で、愛知県愛西市が実施する“バーチャルウォーキング”のイベントに参加したことです。社員に万歩計を配布して歩数を測ったところ、最初の頃は1日約5000歩でしたが、多くの社員が率先して参加するようになり、1日10000歩を超える者も多く出てきました。」
「とても面白い取組みだったので、イベント終了後も、私(佐藤さん)が当社オリジナルの“バーチャルウォーキング”イベントを企画しました。コンセプトは、日本全国の名所旧跡を巡る、というもので、日本地図を見ながら次の目的地までの距離を測り、社員の日々の歩数と共に登録して、どこまで回れたかわかるようにしています。日本の“都市”、“城”と取り上げてきて、3週目の現在は“神社仏閣”を巡っています。90日間で1クールとしており、その期間中に、歩数が上位だった者に加えて、前クールよりも多く歩いた方も表彰するようにしています。毎日の歩数が見える化されることで、歩行習慣が自然と身につくと共に、社員同士でも運動や健康について話す機会が増え、コミュニケーション活性化にも役立っていると思います。」
けん玉大会 「さらに運動する機会を増やそうと、2024年からは“けん玉選手権”をはじめました。従業員の間でも特に評判が良く、各事業所にけん玉を置いてあるのですが、休み時間などに皆で楽しそうにけん玉を行っています。前回大会(2025年5月開催)には、全従業員が参加しました。運動機会の増進が目的ではありますが、体幹を鍛えることにもつながり、目と手の協応が必要な動きに取り組むことで脳の活性化にもつながっています。」
経営者が産業カウンセラー資格を取得したり、産保センターの研修を受講するなどして、メンタルヘルスの知識とスキルを身につけ実践しています 「メンタルヘルス対策の取組みも以前から大事だと考えて、取り組んでいました。まず、取締役(横山さん)が、自身の興味関心からメンタルヘルス分野に関する民間資格をもともと持っていましたので、そこで学んだことを活かして、日頃から従業員に対する声かけや雑談、相談対応などを行ってくれていました。2018年には産業カウンセラー資格も取得し、さらに知識とスキルを身につけてくれたことを機に、ストレスに関する調査も始めました。地元の産業保健総合支援センターが開催しているWeb研修会にも定期的に参加し、メンタルヘルス対策に関する勉強を継続しています。」
「2021年からは、“こころの耳広報物個別送付依頼”に毎年応募して、無料で送付してもらった“こころの耳”のポスターを事業所内に貼るとともに、カードとリーフレットを従業員に配布しています。無料で活用できる分かりやすい広報物を通じて、メンタルヘルスの大切さを従業員に伝えています。」
治療と仕事の両立支援「取締役(横山さん)は、“両立支援コーディネーター”の知識をもとに、がんの治療をしながら働いている従業員の支援も行っています。地元のがんセンターからがんに関する資料を取り寄せ、従業員へ配布するなど、健康増進への意識や知識の向上を目的に様々な取り組みを行っています。」
「こうした取組みを通じて、2019年に初めて“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受けることができました。その後、関連会社と統合し株式会社になりましたが、7年連続で認定を受けることができています。」
ストレスに関する調査は、自身のストレス状態に気づいてもらうことを目的に実施しており、外国人労働者も受けやすいように様々な工夫をしている。
次に、ストレスに関する調査の実施状況についてお話を伺った。
「こころの耳」ポスターストレスに関する調査は自身のストレス状態に気づいてもらうことを目的に実施しています 「ストレスに関する調査は、年に2回ほど行っています。労働安全衛生法に基づくストレスチェックの要件を満たすものではないですが、ストレス度に関する調査票を社員に配布して、つけた○の数を自身で数えることによって、自身のストレス状態に気づいてもらうことが目的です。従業員からは、自分の状態が分かって安心したといった声がありました。当社は業務でパソコンやスマートフォンを使用することがほとんどありませんので、紙形式で実施しており、個人結果シートの回収は行っていません。」
外国人労働者もストレスに関する調査を受けやすいように様々な工夫をしています。 「また、当社は従業員の約1/4が外国人のため、外国人でもストレスに関する調査が受けられる環境整備をしています。以前は中国人がほとんどだったので、中国語に翻訳した調査票を使ったこともあったのですが、その後、カンボジア人やベトナム人、インドネシア人など様々な方が働いてくれるようになりましたので、絵と簡単な日本語で構成されている“ストレスチェック質問票(ふりがなイラスト付き)”を使ったこともありました。現在は、30問の“簡易ストレス度チェック票”を使用しており、外国人の従業員が実施する際は通訳の方がサポートしたり、自動翻訳機を利用したりしながら受けてもらっています。ストレスが高かった場合は、本人の希望があれば、産業カウンセラー資格を持つ取締役が面談を行った上で、医師との面談等につなげるという仕組みを整えています。」
会社全体の仕事量を減らすという英断をしたことで残業時間が無くなり、従業員も余裕をもって働けるようになりました。 「10年ほど前までは、仕事量が多く、長時間労働となっている者もおり、社員皆がギスギスして会話が無く、社内の雰囲気も良くありませんでした。そうした状態では当然仕事もうまく回らず、ますます雰囲気が悪くなるといった悪循環に陥っていたと思います。」
「健康経営に取り組み始めてからは、会社全体の仕事量を減らしました。その結果、売上高は少し落ちてはいますが、残業時間は無くなり、従業員は余裕をもって働くことができるようになっていると感じています。従業員が辞めることなく、これからも健康に長く働いてもらえるために、少し余裕を持ちながら楽しく健康に働ける環境を守り続けることが、会社にとってなによりも大きなメリットだと考えています。」
【取材協力】株式会社サトー化成
(2025年10月掲載)
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